vetcareer
キャリアの選択肢

地方公務員獣医師の採用倍率|47都道府県を調べたら、定員割れでした

地方公務員獣医師の採用倍率を47都道府県で調べたら、公表は4都府県だけ。埼玉県は23人募集して合格9人。獣医師の採用がいま「入りやすい」理由をまとめました。

📅🔄⏱約14分で読めます
#地方公務員獣医師#公務員獣医師#公務員試験#採用倍率#選考採用#家畜保健衛生所
地方公務員獣医師の採用倍率|47都道府県を調べたら、定員割れでした
ゆっけ書いた人:ゆっけ(現役獣医師)保健所→産業動物臨床→家畜保健衛生所→畜産と、4つの現場を経験。
ワン

ワン

ゆっけさん、地方公務員獣医師って倍率どのくらいなんですか?

ゆっけ

ゆっけ

それが、47都道府県で4つしか公表していませんでした。

倍率を全県調べました。

出てきたのは、東京都・埼玉県・千葉県・京都府の4つだけです。

いちばん高い京都府でも2.0倍。埼玉県は23人募集して、合格9人でした。

残る43道府県には、倍率という数字そのものがありません。

理由ははっきりしています。獣医師の採用は「選考採用」なので、倍率が出ない仕組みだからです。

📌 この記事の結論

  • 獣医師は選考採用なので、倍率という数字がそもそもない
  • 埼玉県も定員割れ(23人募集して、合格は9人)
  • 「1回で締め切る」と書いた県はゼロ。通年・随時・年3〜4回が当たり前
  • 教養試験を廃止した県もある。年齢上限は62歳未満の県も
  • 減っている原因は初任給の低さと小動物志向
  • つまり、地方公務員獣医師は入りやすい状況です

47都道府県を調べて、倍率が分かったのは4都府県だけでした

47都道府県の採用ページと、人事委員会が出している「試験実施状況」を1件ずつ検索しました。

獣医師の倍率が載っていたのは、東京都・埼玉県・千葉県・京都府の4つだけです。

都道府県倍率内訳
京都府2.0申込6/1次受験6/1次合格6/最終合格3
埼玉県1.9採用予定23/申込20/1次受験17/最終合格9
東京都1.5採用予定14/申込31/受験22/最終合格15
千葉県1.3申込15/受験14/最終合格11

なぜ、この4つだけなのか

理由ははっきりしています。

一般行政職など獣医師
形式競争試験選考採用
実施人事委員会農政課・保健福祉部など
結果の公表受験者数・合格者数・倍率合格者の受験番号のみ

競争試験は「点数の上から順に採る」ので、倍率が意味を持ちます。

選考採用は違います。基準を満たしているかどうかを見て、満たしていれば採る。だから倍率という概念自体が薄いのです。

競争試験と選考採用の違い。競争試験は点数の上から順に採る。選考採用は基準を満たせば採る

同じ「試験」でも、採り方の考え方がまったく違います

倍率が出た4つは、いずれも獣医師を競争試験の区分に入れている自治体でした。東京都はⅠ類B、埼玉県は免許資格職試験、千葉県は資格免許職試験、京都府は一類採用試験です。

残る43道府県は選考採用です。人事委員会のページを開いても、獣医師という区分が載っていません。

大阪府と神奈川県も確認しましたが、獣医師の数字はどこにもありませんでした。

隠しているのではなく、そもそも集計していないのです。

倍率が出た4都府県も、中身は定員割れでした

数字の中身を見ると、そう読めます。

埼玉県:23人募集して、合格9人

人数
採用予定23人
申込20人
1次受験17人
最終合格9人
埼玉県の採用予定23人、申込20人、1次受験17人、最終合格9人

採用予定23人に対して、申込は20人。最終合格は9人でした

募集人数より、応募が少ないのです。

23人採りたいのに、申し込んだのは20人。そこから最終合格が9人なので、予定の39%しか採れていません。

倍率1.9と聞くと「2倍近い競争」に思えます。

でも、そうではありません。17人が受けて、基準に届いた9人が合格した。その結果が1.9倍という数字です。

落とすための試験ではなく、採れる人がそれだけしかいなかったということです。

京都府:受けた6人が、全員1次を通過

京都府は申込6人、1次受験6人。そして1次合格も6人です。

ふるいにかけていません。

東京都:採用予定より、多く合格を出している

人数
採用予定14人
申込31人
受験22人(受験率71%)
最終合格15人

採用予定14人に対して、最終合格は15人。予定より多く出しています。辞退を見込んでいるからだと思います。

実際の競争は、この数字よりさらに緩いはずです

理由が2つあります。

1つめ。申し込んでも、来ない人がいます。

東京都は申込31人に対して、受験したのは22人。受験率71%。9人は来ていません。埼玉県も、申込20人のうち3人が受験していません。

倍率は、この実際に受けた人を分母にした数字です。

2つめ。合格しても、辞退する人がいます。

栃木県は令和5年度までの5年間、最終合格者が採用予定数を上回った年もありました。それでも予定数を満たせていません。辞退が出るからです。東京都が予定より多く合格を出しているのも、同じ理由でしょう。

ゆっけ

ゆっけ

つまり合格者が、そのまま全員入るとは限らないということです。関東でこの状況でした。

「1回で締め切ります」と書いた県は、ひとつもありませんでした

倍率より、はっきり実態を表しているものがありました。

年に何回募集しているかです。

「通年」「随時」で募集している県

都道府県状況
北海道通年募集
大分県「獣医師を通年で募集しています!」
熊本県随時募集
香川県「申込みに応じて、随時、試験を実施します」
石川県第1回(6月)に加え、6月17日〜翌1月16日まで随時
秋田県5月の試験後も随時。採用予定3名
佐賀県年間を通じて受付(4月24日〜翌1月29日)
山形県4月24日〜翌1月15日(約9か月)

秋田県の案内には、こう書かれていました。

5月の試験に都合が合わない場合でも、連絡いただければ採用試験実施の準備をいたします。

試験日を、受ける人に合わせてくれるということです。

最初から「複数回やる」と決めている県

都道府県回数
新潟県原則4回。採用予定7人程度。達したら中止
長野県原則年4回。採用予定数に達し次第終了
三重県年3〜4回(5月/6〜7月/10〜11月/2月)
群馬県年間を通じて、必要に応じ複数回
長崎県令和7年度は第4回まで。採用予定21名程度
宮城県令和6年度は第4回まで
青森県令和7年度は第3回まで
福島県2回から3回に増やした。4月中旬〜10月上旬まで切れ目なく
福岡県前期・後期の2回。採用予定30人程度
滋賀県年度途中採用の選考と、翌年4月採用の選考を並行して実施
岩手県・静岡県・広島県・山梨県2回目・3回目の募集ページあり
愛知県令和8年度採用で追加募集
奈良県「補充」の選考枠を用意
鹿児島県免許取得見込みと取得済みで区分を分けて募集

1回で定員が埋まるなら、2回目はありません。

第4回まで募集しているということは、3回やっても足りなかったということです。

長崎県の第4回は、受付が11月27日から翌年1月7日まで。4月採用の3か月前です。

岩手県の要項には、こう書かれています。

採用者数が採用予定人員に達した時点で、以降の募集、採用選考を中止する。

達しないことを前提に、募集を続ける設計になっています。

試験会場も広がっています。福岡県は福岡市・東京・札幌の3か所。長崎県は長崎・福岡・大阪・東京の4か所です。受けに来てもらうのではなく、受けられる場所を増やしているということです。

試験が軽くなり、年齢の上限も外れました

もうひとつ、はっきりした変化があります。

筆記が減っています。

都道府県試験内容
大分県面接のみ(論文を廃止)。免許取得済みなら試験日も調整可
福岡県論文試験・人物試験のみ(専門試験なし)
山梨県論文と面接のみ
群馬県論文試験・人物試験のみ(教養試験を廃止)
長崎県適性試験および面接試験のみ
岐阜県秋季試験はSPI方式

一般行政職の公務員試験でいちばん時間がかかるのは、数的処理や文章理解の対策です。そこが、まるごとない県が出てきています。

年齢の上限も、ほぼ外れました

都道府県上限
福岡県62歳未満
山梨県62歳未満(第3回で引き上げ)
長崎県61歳以下
和歌山県61歳以下
福島県60歳以下
秋田県60歳以下

60歳を超えていても受けられます。「新卒しか採らない」という県のほうが、いまや少数派です。

獣医学部は6年制なので、いちばん若くて24歳。そこから62歳まで、約38年ぶんの幅が開いていることになります。

年齢の上限は県ごとにばらつきがあります。47都道府県ぶんをこちらにまとめました。

合格者を出しても、予定数に届いていません

報道からも、同じ状況が確認できます。

栃木県は、令和5年度までの5年間で採用予定が年5〜13人。これに対して最終合格者は年6〜16人でした。

数字だけ見れば、予定を上回っています。

それでも予定数を満たせていません(下野新聞・2024年11月27日)。

ワン

ワン

合格者のほうが多いのに、足りないんですか?

ゆっけ

ゆっけ

辞退が出るからです。多めに合格を出しても、まだ埋まらないということです。

東京都が採用予定14人に対して15人合格させていたのも、同じ理由でしょう。辞退を織り込んで、多めに出しているわけです。

新卒で公務員になるのは、年107人です

新しく獣医師になる人が、どこへ行っているのか。

農林水産省が、獣医大学の卒業生の進路を調べています。

進路人数割合
小動物診療454人47%
産業動物診療126人12%
公務員107人11%

(令和5年3月卒・卒業生は約1,000人/農林水産省調べ)

毎年1,000人が獣医師になって、公務員になるのは107人です。

全国47都道府県と国を、この人数で分け合っています。

10年で減ったのは、公務員だけです

もっと重いのは、この数字の動き方です。

平成25年3月卒令和5年3月卒
小動物診療44%47%
産業動物診療8%12%
公務員16%11%

産業動物は8%から12%に増えました。修学資金の給付など、国が手を打ってきた分野です。

ところが公務員だけは、16%から11%に減っています。

新卒の6人に1人だったのが、9人に1人になったということです。

働いている人の数でも、同じことが起きています

獣医師は2年ごとに届出が義務づけられていて、その集計が公表されています。10年ぶんを並べると、はっきり分かれます。

平成26年令和4年増減
小動物診療15,205人16,541人+1,336人
公務員9,456人9,145人−311人
産業動物診療4,317人4,460人+143人
全体39,098人40,455人+1,357人
平成26年から令和4年の推移。小動物診療は15,205人から16,541人に増加、公務員は9,456人から9,145人に減少

獣医師は増えているのに、公務員だけが減り続けています

獣医師そのものは1,357人増えているのに、公務員だけ311人減っています。

増えたぶんは、ほぼそのまま小動物診療にいきました。

一方で、家畜保健衛生所も食肉衛生検査所も、業務量は減っていません。鳥インフルエンザや豚熱の防疫、と畜検査。どれも人が要ります。

では、なぜ公務員だけが減るのでしょうか。

なぜ、公務員獣医師は減っているのか

調べたかぎり、理由は4つありました。

① 初任給が低い

農林水産省が、家畜保健衛生所で働く獣医師の給与を調べています。

使っている給料表都道府県数初任給(月額)
医療職給料表(二)40205,500〜226,000円
行政職給料表(一)5203,700〜210,100円
特定獣医師職給料表2(徳島県・福岡県)220,800〜223,500円

(令和5年度/農林水産省調べ)

月20万円台の前半です。5つの県は、一般の事務職とまったく同じ給料表を使っています。

だから41都道府県が「初任給調整手当」を上乗せしています。人が集まりにくい職に付く手当です。

本俸だけでは来てもらえないと、県のほうが認めているということです。

手当を足した実際の支給額は、47都道府県ぶんをこちらに並べました。

② 学生が小動物に向かっている

新卒の47%が小動物診療に進み、公務員は11%。実習で見てきたのも、イメージが湧くのも動物病院だからです。

この偏りについては、地方公務員獣医師はセーフティネットで詳しく書きました。

③ 産休・育休は取れる。でも、その穴が埋まらない

あまり知られていない事情です。

獣医師全体では女性は36.0%ですが、20代にかぎると54.8%。すでに半分を超えています。

公務員なので、産休も育休も制度としてきちんと取れます。そこは民間の動物病院より恵まれています。

問題は、休んでいる間を埋める人がいないことです。

農林水産省が都道府県に行ったアンケートにも、「産休・育休職員の代替職員の確保」という項目が立っていました。

広島県は、県庁に獣医師をあらかじめ多めに置いて、足りなくなった家保へ動かす形をとっています。そこまでしないと回りません。

④ 入ったあとに、辞める人がいる

同じアンケートには、「若手職員の早期離職対策」という項目もあります。

島根県は大学院に通う旅費を出し、岩手県は本人の希望する分野に配属する。そうやって引き止めようとしています。

採れないだけでなく、入った人が辞めることも課題になっているということです。

地方公務員獣医師は、いま入りやすい

ここからが本題です。この状況は、受ける側にとって何を意味するのか。

ポイント

定員割れが続いているということは、受ける側は入りやすいということです。

筆記の比重が下がり、面接で決まる県が増えています。

1つめ 筆記より面接で決まります

選考採用は、教養試験のウェイトが低い県が多いです。論文と面接で構成される県もあります。

長崎県の第4回は「適性試験及び面接試験(専門知識に関する内容を含む)」だけです。

一般行政職のような数的処理や文章理解の対策に何百時間もかける必要はありません。そこは大きな違いです。

2つめ 併願できます

年に複数回、しかも県ごとに時期がずれています。

第1回で不合格でも、第2回がある。A県が終わってからB県を受けることもできます。一発勝負ではありません。

3つめ 年度の途中でも入れます

香川県の「随時」、佐賀県の「年間を通じて受付」がそうです。

臨床を辞めてから探し始めても、間に合うということです。4月採用に間に合わなくても、欠員があれば動きます。

4つめ 既卒・経験者も歓迎されています

福岡県と山梨県は62歳未満まで受けられます。

新卒しか採らない、という県のほうが少数派になってきました。臨床経験があれば加算される県もあります。

ゆっけ

ゆっけ

私自身、臨床から公務員に戻った経験があります。あのとき知っていたら、もっと落ち着いて選べたと思います。

逆に、注意しておきたいこと

追い風とはいえ、そのまま受け取らないほうがいい点もあります。

人が足りない職場に入るということです。

欠員が埋まらないまま業務が回っているなら、そのぶんの負荷は既存の職員にかかっています。入ってから「思っていたより忙しい」となる可能性はあります。

説明会や面接では、こう聞いてみてください。

確認すること聞き方の例
欠員の状況「いま、定数に対して何名欠員がありますか?」
配属先の人数「家畜保健衛生所は、1か所あたり何名体制ですか?」
直近の採用実績「昨年度は何名採用されましたか?」

採用が苦しい県ほど、正直に答えてくれます。隠す理由がないからです。

まとめ:「倍率」より「募集の回数」を見る

  • 倍率を公表しているのは47都道府県中4つだけ(東京1.5倍、埼玉1.9倍、千葉1.3倍、京都2.0倍)
  • 残る43道府県は選考採用。競争試験ではないので、倍率という数字がそもそもない
  • 埼玉県は23人募集して合格9人(予定の39%)。京都府は受けた6人が全員1次を通過
  • 東京都は受験率71%。申し込んでも3割は来ていない
  • 「1回で締め切ります」と書いた県は、ひとつもなかった
  • 北海道・大分・熊本・香川などは通年/随時募集。新潟・長野・三重は年3〜4回
  • 大分県は面接のみ、群馬県は教養試験を廃止。筆記が減っている
  • 年齢上限は62歳未満の県も。下は24歳なので、約38年ぶんの幅がある
  • 栃木県は5年間、合格者が予定数を上回った年でも充足していない(辞退のため)
  • 新卒で公務員になるのは年107人。10年で16%から11%へ減っている
  • 減っている原因は、初任給が月20万円台前半であること、学生が小動物に向かうこと、産休・育休の代わりがいないこと、若手が辞めること
  • だから41都道府県が初任給調整手当を上乗せしている(宮崎県は月7万円)
  • 受ける側には入りやすい状況。ただし「人が足りない職場に入る」ことは確認しておく
ゆっけ

ゆっけ

「公務員は狭き門」というイメージ、獣医師に関しては当てはまりません。

倍率が公表されていないことに、最初は困りました。でも47都道府県を調べ終わってみると、公表されていないこと自体が答えでした。

競争試験にする必要がないほど、人が足りていないのです。

迷っているなら、まず1回受けてみてください。落ちても次があります。

仕事の中身・年収・試験のことは、こちらにまとめています。


出典:獣医事をめぐる情勢(令和6年2月・農林水産省)/獣医師の届出状況(農林水産省)/都道府県の家畜衛生公務員等獣医師確保対策アンケート結果概要(令和5年7月・農林水産省)

※ 記事中の数字は、各自治体の人事委員会・採用ページ・募集要項、および報道をもとに2026年8月時点で確認したものです。年度によって変わります。最新情報は各自治体の採用ページでご確認ください。

SHARE THIS ARTICLE

ゆっけ
ここまで読んでくれてありがとう。最後にひとつだけ、伝えたいことがあります。

NEXT STEP

読んで終わりにしない。
まずは自分の市場価値を知ろう

転職エージェントの登録は無料。求人を見るだけでも、今の職場の見え方が変わります。 獣医師向けに厳選したエージェントをランキング形式で比較しました。

転職サイトランキングを見る →

※ 当サイトはアフィリエイト広告を含みます

関連記事

PAGE TOP