
ワン
ゆっけさん、地方公務員獣医師って倍率どのくらいなんですか?

ゆっけ
それが、47都道府県で4つしか公表していませんでした。
前回、47都道府県の給与を調べたので、次は倍率だと思って同じように全県を回りました。
倍率が出てきたのは、東京都・埼玉県・千葉県・京都府の4つだけです。
しかも、いちばん高い京都府で2.0倍。埼玉県にいたっては、23人募集して合格9人でした。
残る43道府県には、そもそも倍率という数字がありません。
**なぜないのか。**そこを追いかけたら、いまの採用の姿がそのまま出てきました。
📌 この記事の結論
- 倍率を公表しているのは47都道府県中4つだけ。獣医師は「選考採用」だから
- 埼玉県も定員割れしています(23人募集して、合格は9人)
- 北海道・大分・熊本・香川は通年/随時募集。新潟・長野・三重は年3〜4回試験を実施
- 教養試験を廃止している県が複数ある。年齢上限は62歳未満の県も
- 受験者がゼロだった自治体もある
- これは受験する側にとって追い風です
47都道府県を調べて、倍率が分かったのは4都府県だけでした
47都道府県の採用ページと、人事委員会が出している「試験実施状況」を1件ずつ当たりました。
獣医師の倍率が載っていたのは、東京都・埼玉県・千葉県・京都府の4つだけです。
| 都道府県 | 倍率 | 内訳 |
|---|---|---|
| 京都府 | 2.0 | 申込6/1次受験6/1次合格6/最終合格3 |
| 埼玉県 | 1.9 | 採用予定23/申込20/1次受験17/最終合格9 |
| 東京都 | 1.5 | 採用予定14/申込31/受験22/最終合格15 |
| 千葉県 | 1.3 | 申込15/受験14/最終合格11 |
なぜ、この4つだけなのか
理由ははっきりしています。
| 一般行政職など | 獣医師 | |
|---|---|---|
| 形式 | 競争試験 | 選考採用 |
| 実施 | 人事委員会 | 農政課・保健福祉部など |
| 結果の公表 | 受験者数・合格者数・倍率 | 合格者の受験番号のみ |
競争試験は「点数の上から順に採る」ので、倍率が意味を持ちます。
選考採用は違います。**基準を満たしているかどうかを見て、満たしていれば採る。**だから倍率という概念自体が薄いのです。

同じ「試験」でも、採り方の考え方がまったく違います
倍率が出た4つは、いずれも獣医師を競争試験の区分に入れている自治体でした。東京都はⅠ類B、埼玉県は免許資格職試験、千葉県は資格免許職試験、京都府は一類採用試験です。
残る43道府県は選考採用なので、人事委員会の実施状況を開いても、獣医師の行そのものがありません。大阪府と神奈川県がそうでした。
4つとも、落とすための試験ではありませんでした
数字の中身を見ると、そう読めます。
埼玉県:23人募集して、合格9人
| 人数 | |
|---|---|
| 採用予定 | 23人 |
| 申込 | 20人 |
| 1次受験 | 17人 |
| 最終合格 | 9人 |

採用予定23人に対して、申込は20人。最終合格は9人でした
募集人数より、応募が少ないのです。
23人採りたいのに、申し込んだのは20人。そこから最終合格が9人なので、予定の39%しか採れていません。
倍率1.9は「2倍近い競争」に見えますが、中身は違います。落とすための試験ではなく、基準に届いた人だけ採った結果が9人です。
京都府:受けた6人が、全員1次を通過
京都府は申込6人、1次受験6人。そして1次合格も6人です。
ふるいにかけていません。東京都:採用予定より、多く合格を出している
| 人数 | |
|---|---|
| 採用予定 | 14人 |
| 申込 | 31人 |
| 受験 | 22人(受験率71%) |
| 最終合格 | 15人 |
採用予定14人に対して、最終合格は15人。**予定より多く出しています。**辞退を見込んでいるからだと思います。
実際の競争は、この数字よりさらに緩いはずです
理由が2つあります。
1つめ。申し込んでも、来ない人がいます。
東京都は申込31人に対して、受験したのは22人。**受験率71%**です。9人は来ていません。埼玉県も、申込20人のうち3人が受験していません。
倍率は、この実際に受けた人を分母にした数字です。
2つめ。合格しても、辞退する人がいます。
栃木県は令和5年度までの5年間、最終合格者が採用予定数を上回った年もありました。それでも予定数を満たせていません。辞退が出るからです。東京都が予定より多く合格を出しているのも、同じ理由でしょう。

ゆっけ
つまり合格者が、そのまま全員入るとは限らないということです。関東でこの状況でした。
「1回で締め切ります」と書いた県は、ひとつもありませんでした
倍率より、はっきり実態を表しているものがありました。
年に何回募集しているかです。
「通年」「随時」で募集している県
| 都道府県 | 状況 |
|---|---|
| 北海道 | 通年募集 |
| 大分県 | 「獣医師を通年で募集しています!」 |
| 熊本県 | 随時募集 |
| 香川県 | 「申込みに応じて、随時、試験を実施します」 |
| 石川県 | 第1回(6月)に加え、6月17日〜翌1月16日まで随時 |
| 秋田県 | 5月の試験後も随時。採用予定3名 |
| 佐賀県 | 年間を通じて受付(4月24日〜翌1月29日) |
| 山形県 | 4月24日〜翌1月15日(約9か月) |
秋田県の案内には、こう書かれていました。
5月の試験に都合が合わない場合でも、連絡いただければ採用試験実施の準備をいたします。
試験日を、受ける人に合わせてくれるということです。
最初から「複数回やる」と決めている県
| 都道府県 | 回数 |
|---|---|
| 新潟県 | 原則4回。採用予定7人程度。達したら中止 |
| 長野県 | 原則年4回。採用予定数に達し次第終了 |
| 三重県 | 年3〜4回(5月/6〜7月/10〜11月/2月) |
| 群馬県 | 年間を通じて、必要に応じ複数回 |
| 長崎県 | 令和7年度は第4回まで。採用予定21名程度 |
| 宮城県 | 令和6年度は第4回まで |
| 青森県 | 令和7年度は第3回まで |
| 福島県 | 2回から3回に増やした。4月中旬〜10月上旬まで切れ目なく |
| 福岡県 | 前期・後期の2回。採用予定30人程度 |
| 滋賀県 | 年度途中採用の選考と、翌年4月採用の選考を並行して実施 |
| 岩手県・静岡県・広島県・山梨県 | 2回目・3回目の募集ページあり |
| 愛知県 | 令和8年度採用で追加募集 |
| 奈良県 | 「補充」の選考枠を用意 |
| 鹿児島県 | 免許取得見込みと取得済みで区分を分けて募集 |
1回で定員が埋まるなら、2回目はありません。
第4回まで募集しているということは、3回やっても足りなかったということです。
長崎県の第4回は、受付が11月27日から翌年1月7日まで。4月採用の3か月前です。
岩手県の要項には、こう書かれています。
採用者数が採用予定人員に達した時点で、以降の募集、採用選考を中止する。
達しないことを前提に、募集を続ける設計になっています。
試験会場も広がっています。福岡県は福岡市・東京・札幌の3か所。長崎県は長崎・福岡・大阪・東京の4か所です。受けに来てもらうのではなく、受けられる場所を増やしているということです。
試験が軽くなり、年齢の上限も外れました
もうひとつ、はっきりした変化があります。
筆記が減っています。
| 都道府県 | 試験内容 |
|---|---|
| 大分県 | 面接のみ(論文を廃止)。免許取得済みなら試験日も調整可 |
| 福岡県 | 論文試験・人物試験のみ(専門試験なし) |
| 山梨県 | 論文と面接のみ |
| 群馬県 | 論文試験・人物試験のみ(教養試験を廃止) |
| 長崎県 | 適性試験および面接試験のみ |
| 岐阜県 | 秋季試験はSPI方式 |
一般行政職の公務員試験でいちばん時間がかかるのは、数的処理や文章理解の対策です。そこが、まるごとない県が出てきています。
年齢の上限も、ほぼ外れました
| 都道府県 | 上限 |
|---|---|
| 福岡県 | 62歳未満 |
| 山梨県 | 62歳未満(第3回で引き上げ) |
| 長崎県 | 61歳以下 |
| 和歌山県 | 61歳以下 |
| 福島県 | 60歳以下 |
| 秋田県 | 60歳以下 |
60歳を超えていても受けられます。「新卒しか採らない」という県のほうが、いまや少数派です。
獣医学部は6年制なので、いちばん若くて24歳。そこから62歳まで、約38年ぶんの幅が開いていることになります。
合格者を出しても、予定数に届いていません
報道からも、同じ状況が確認できます。
栃木県は、令和5年度までの5年間で採用予定が年5〜13人。これに対して最終合格者は年6〜16人でした。
数字だけ見れば、予定を上回っています。
それでも予定数を満たせていません(下野新聞・2024年11月27日)。

ワン
合格者のほうが多いのに、足りないんですか?

ゆっけ
辞退が出るからです。多めに合格を出しても、まだ埋まらないということです。
東京都が採用予定14人に対して15人合格させていたのも、同じ理由でしょう。辞退を織り込んで、多めに出しているわけです。
背景にあるのは、進路の偏りです
獣医師全体の内訳を見ると、理由が見えます。
| 分野 | 割合 |
|---|---|
| 小動物診療 | 約41% |
| 公務員獣医師 | 約23% |
(2022年12月末時点)
毎年およそ1,000人が獣医師になりますが、公務員を選ぶのは4人に1人です。
しかも、公務員獣医師は減っています
獣医師は2年ごとに届出が義務づけられていて、その集計が公表されています。10年ぶんを並べると、はっきり分かれます。
| 平成26年 | 令和4年 | 増減 | |
|---|---|---|---|
| 小動物診療 | 15,205人 | 16,541人 | +1,336人 |
| 公務員 | 9,456人 | 9,145人 | −311人 |
| 産業動物診療 | 4,317人 | 4,460人 | +143人 |
| 全体 | 39,098人 | 40,455人 | +1,357人 |

獣医師は増えているのに、公務員だけが減り続けています
増えたぶんは、ほぼそのまま小動物診療にいきました。
一方で、家畜保健衛生所も食肉衛生検査所も、業務量は減っていません。鳥インフルエンザや豚熱の防疫、と畜検査。どれも人が要ります。
前回の記事で見た初任給調整手当の増額競争は、この不足が数字に出たものです。宮崎県が月7万円、山口県や広島県が月6万円。払わないと来てもらえないということです。
受験する側にとって、これは追い風です
ここからが本題です。この状況は、受ける側にとって何を意味するのか。
定員割れが続いているということは、受験する側には追い風だということです。
筆記の比重が下がり、面接で決まる県が増えています。
1つめ 筆記より面接で決まります
選考採用は、教養試験のウェイトが低い県が多いです。論文と面接で構成される県もあります。
長崎県の第4回は「適性試験及び面接試験(専門知識に関する内容を含む)」だけです。
一般行政職のような**数的処理や文章理解の対策に何百時間もかける必要はありません。**そこは大きな違いです。
2つめ 併願できます
年に複数回、しかも県ごとに時期がずれています。
**第1回で不合格でも、第2回がある。**A県が終わってからB県を受けることもできます。一発勝負ではありません。
3つめ 年度の途中でも入れます
香川県の「随時」、佐賀県の「年間を通じて受付」がそうです。
臨床を辞めてから探し始めても、間に合うということです。4月採用に間に合わなくても、欠員があれば動きます。
4つめ 既卒・経験者も歓迎されています
福岡県と山梨県は62歳未満まで受けられます。
新卒しか採らない、という県のほうが少数派になってきました。臨床経験があれば加算される県もあります。

ゆっけ
僕自身、臨床から公務員に戻った経験があります。あのとき知っていたら、もっと落ち着いて選べたと思います。
逆に、注意しておきたいこと
追い風とはいえ、そのまま受け取らないほうがいい点もあります。
人が足りない職場に入るということです。
欠員が埋まらないまま業務が回っているなら、そのぶんの負荷は既存の職員にかかっています。入ってから「思っていたより忙しい」となる可能性はあります。
説明会や面接では、こう聞いてみてください。
| 確認すること | 聞き方の例 |
|---|---|
| 欠員の状況 | 「いま、定数に対して何名欠員がありますか?」 |
| 配属先の人数 | 「家畜保健衛生所は、1か所あたり何名体制ですか?」 |
| 直近の採用実績 | 「昨年度は何名採用されましたか?」 |
**採用が苦しい県ほど、正直に答えてくれます。**隠す理由がないからです。
まとめ
- 倍率を公表しているのは47都道府県中4つだけ(東京1.5倍、埼玉1.9倍、千葉1.3倍、京都2.0倍)
- 残る43道府県は選考採用。競争試験ではないので、倍率という数字がそもそもない
- 埼玉県は23人募集して合格9人(予定の39%)。京都府は受けた6人が全員1次を通過
- 東京都は受験率71%。申し込んでも3割は来ていない
- 「1回で締め切ります」と書いた県は、ひとつもなかった
- 北海道・大分・熊本・香川などは通年/随時募集。新潟・長野・三重は年3〜4回
- 大分県は面接のみ、群馬県は教養試験を廃止。筆記が減っている
- 年齢上限は62歳未満の県も。下は24歳なので、約38年ぶんの幅がある
- 栃木県は5年間、合格者が予定数を上回った年でも充足していない(辞退のため)
- 受験する側には追い風。ただし「人が足りない職場に入る」ことは確認しておく

ゆっけ
「公務員は狭き門」というイメージ、獣医師に関しては当てはまりません。
倍率が公表されていないことに、最初は困りました。でも47都道府県を調べ終わってみると、公表されていないこと自体が答えでした。
競争試験にする必要がないほど、人が足りていないのです。
迷っているなら、まず1回受けてみてください。落ちても次があります。
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