vetcareer|獣医師のための転職メディア
vetcareer
獣医師のリアル|現場の1日・あるある・体験談キャリアの選択肢|あなたに合う働き方を探す転職する|書類・面接・エージェントお金|年収・手取り・制度を知る
キャリアの選択肢

地方公務員獣医師の採用倍率|47都道府県を調べたら、定員割れでした

地方公務員獣医師の採用倍率を47都道府県で調べたところ、倍率が公表されていたのは4都府県だけでした。理由は競争試験ではなく「選考採用」だから。埼玉県は23人募集して最終合格9人、長崎県は年4回募集、栃木県は合格者を多めに出しても充足せず。試験の軽量化や年齢制限の緩和まで、いまの採用の実態をまとめました。

📅🔄26分で読めます
#地方公務員獣医師#公務員獣医師#公務員試験#採用倍率#選考採用#家畜保健衛生所
地方公務員獣医師の採用倍率|47都道府県を調べたら、定員割れでした
ゆっけ書いた人:ゆっけ(現役獣医師)保健所→産業動物臨床→家畜保健衛生所→畜産と、4つの現場を経験。
ワン

ワン

ゆっけさん、地方公務員獣医師って倍率どのくらいなんですか?

ゆっけ

ゆっけ

それが、47都道府県で4つしか公表していませんでした。

前回、47都道府県の給与を調べたので、次は倍率だと思って同じように全県を回りました。

倍率が出てきたのは、東京都・埼玉県・千葉県・京都府の4つだけです。

しかも、いちばん高い京都府で2.0倍。埼玉県にいたっては、23人募集して合格9人でした。

残る43道府県には、そもそも倍率という数字がありません。

**なぜないのか。**そこを追いかけたら、いまの採用の姿がそのまま出てきました。

📌 この記事の結論

  • 倍率を公表しているのは47都道府県中4つだけ。獣医師は「選考採用」だから
  • 埼玉県も定員割れしています(23人募集して、合格は9人)
  • 北海道・大分・熊本・香川は通年/随時募集。新潟・長野・三重は年3〜4回試験を実施
  • 教養試験を廃止している県が複数ある。年齢上限は62歳未満の県も
  • 受験者がゼロだった自治体もある
  • これは受験する側にとって追い風です
💡この記事でわかること
  • 地方公務員獣医師の採用倍率が公表されない理由
  • 実際に確認できた県の数字
  • 全国の募集回数・通年募集の実態
  • 教養試験の廃止と年齢制限の緩和
  • 各県が打っている人材確保策
  • 受験する側が知っておくべきこと

47都道府県を調べて、倍率が分かったのは4都府県だけでした

47都道府県の採用ページと、人事委員会が出している「試験実施状況」を1件ずつ当たりました。

獣医師の倍率が載っていたのは、東京都・埼玉県・千葉県・京都府の4つだけです。

都道府県倍率内訳
京都府2.0申込6/1次受験6/1次合格6/最終合格3
埼玉県1.9採用予定23/申込20/1次受験17/最終合格9
東京都1.5採用予定14/申込31/受験22/最終合格15
千葉県1.3申込15/受験14/最終合格11

なぜ、この4つだけなのか

理由ははっきりしています。

一般行政職など獣医師
形式競争試験選考採用
実施人事委員会農政課・保健福祉部など
結果の公表受験者数・合格者数・倍率合格者の受験番号のみ

競争試験は「点数の上から順に採る」ので、倍率が意味を持ちます。

選考採用は違います。**基準を満たしているかどうかを見て、満たしていれば採る。**だから倍率という概念自体が薄いのです。

競争試験と選考採用の違い。競争試験は点数の上から順に採る。選考採用は基準を満たせば採る

同じ「試験」でも、採り方の考え方がまったく違います

倍率が出た4つは、いずれも獣医師を競争試験の区分に入れている自治体でした。東京都はⅠ類B、埼玉県は免許資格職試験、千葉県は資格免許職試験、京都府は一類採用試験です。

残る43道府県は選考採用なので、人事委員会の実施状況を開いても、獣医師の行そのものがありません。大阪府と神奈川県がそうでした。

4つとも、落とすための試験ではありませんでした

数字の中身を見ると、そう読めます。

埼玉県:23人募集して、合格9人

人数
採用予定23人
申込20人
1次受験17人
最終合格9人
埼玉県の採用予定23人、申込20人、1次受験17人、最終合格9人

採用予定23人に対して、申込は20人。最終合格は9人でした

募集人数より、応募が少ないのです。

23人採りたいのに、申し込んだのは20人。そこから最終合格が9人なので、予定の39%しか採れていません。

倍率1.9は「2倍近い競争」に見えますが、中身は違います。落とすための試験ではなく、基準に届いた人だけ採った結果が9人です。

京都府:受けた6人が、全員1次を通過

京都府は申込6人、1次受験6人。そして1次合格も6人です。

ふるいにかけていません。

東京都:採用予定より、多く合格を出している

人数
採用予定14人
申込31人
受験22人(受験率71%)
最終合格15人

採用予定14人に対して、最終合格は15人。**予定より多く出しています。**辞退を見込んでいるからだと思います。

実際の競争は、この数字よりさらに緩いはずです

理由が2つあります。

1つめ。申し込んでも、来ない人がいます。

東京都は申込31人に対して、受験したのは22人。**受験率71%**です。9人は来ていません。埼玉県も、申込20人のうち3人が受験していません。

倍率は、この実際に受けた人を分母にした数字です。

2つめ。合格しても、辞退する人がいます。

栃木県は令和5年度までの5年間、最終合格者が採用予定数を上回った年もありました。それでも予定数を満たせていません。辞退が出るからです。東京都が予定より多く合格を出しているのも、同じ理由でしょう。

ゆっけ

ゆっけ

つまり合格者が、そのまま全員入るとは限らないということです。関東でこの状況でした。

「1回で締め切ります」と書いた県は、ひとつもありませんでした

倍率より、はっきり実態を表しているものがありました。

年に何回募集しているかです。

「通年」「随時」で募集している県

都道府県状況
北海道通年募集
大分県「獣医師を通年で募集しています!」
熊本県随時募集
香川県「申込みに応じて、随時、試験を実施します」
石川県第1回(6月)に加え、6月17日〜翌1月16日まで随時
秋田県5月の試験後も随時。採用予定3名
佐賀県年間を通じて受付(4月24日〜翌1月29日)
山形県4月24日〜翌1月15日(約9か月

秋田県の案内には、こう書かれていました。

5月の試験に都合が合わない場合でも、連絡いただければ採用試験実施の準備をいたします

試験日を、受ける人に合わせてくれるということです。

最初から「複数回やる」と決めている県

都道府県回数
新潟県原則4回。採用予定7人程度。達したら中止
長野県原則年4回。採用予定数に達し次第終了
三重県年3〜4回(5月/6〜7月/10〜11月/2月)
群馬県年間を通じて、必要に応じ複数回
長崎県令和7年度は第4回まで。採用予定21名程度
宮城県令和6年度は第4回まで
青森県令和7年度は第3回まで
福島県2回から3回に増やした。4月中旬〜10月上旬まで切れ目なく
福岡県前期・後期の2回。採用予定30人程度
滋賀県年度途中採用の選考と、翌年4月採用の選考を並行して実施
岩手県・静岡県・広島県・山梨県2回目・3回目の募集ページあり
愛知県令和8年度採用で追加募集
奈良県「補充」の選考枠を用意
鹿児島県免許取得見込み取得済みで区分を分けて募集

1回で定員が埋まるなら、2回目はありません。

第4回まで募集しているということは、3回やっても足りなかったということです。

長崎県の第4回は、受付が11月27日から翌年1月7日まで。4月採用の3か月前です。

岩手県の要項には、こう書かれています。

採用者数が採用予定人員に達した時点で、以降の募集、採用選考を中止する

達しないことを前提に、募集を続ける設計になっています。

試験会場も広がっています。福岡県は福岡市・東京・札幌の3か所。長崎県は長崎・福岡・大阪・東京の4か所です。受けに来てもらうのではなく、受けられる場所を増やしているということです。

試験が軽くなり、年齢の上限も外れました

もうひとつ、はっきりした変化があります。

筆記が減っています。

都道府県試験内容
大分県面接のみ(論文を廃止)。免許取得済みなら試験日も調整可
福岡県論文試験・人物試験のみ(専門試験なし)
山梨県論文と面接のみ
群馬県論文試験・人物試験のみ(教養試験を廃止
長崎県適性試験および面接試験のみ
岐阜県秋季試験はSPI方式

一般行政職の公務員試験でいちばん時間がかかるのは、数的処理や文章理解の対策です。そこが、まるごとない県が出てきています。

年齢の上限も、ほぼ外れました

都道府県上限
福岡県62歳未満
山梨県62歳未満(第3回で引き上げ)
長崎県61歳以下
和歌山県61歳以下
福島県60歳以下
秋田県60歳以下

60歳を超えていても受けられます。「新卒しか採らない」という県のほうが、いまや少数派です。

獣医学部は6年制なので、いちばん若くて24歳。そこから62歳まで、約38年ぶんの幅が開いていることになります。

合格者を出しても、予定数に届いていません

報道からも、同じ状況が確認できます。

栃木県は、令和5年度までの5年間で採用予定が年5〜13人。これに対して最終合格者は年6〜16人でした。

数字だけ見れば、予定を上回っています。

それでも予定数を満たせていません(下野新聞・2024年11月27日)。

ワン

ワン

合格者のほうが多いのに、足りないんですか?

ゆっけ

ゆっけ

辞退が出るからです。多めに合格を出しても、まだ埋まらないということです。

東京都が採用予定14人に対して15人合格させていたのも、同じ理由でしょう。辞退を織り込んで、多めに出しているわけです。

背景にあるのは、進路の偏りです

獣医師全体の内訳を見ると、理由が見えます。

分野割合
小動物診療約41%
公務員獣医師約23%

(2022年12月末時点)

毎年およそ1,000人が獣医師になりますが、公務員を選ぶのは4人に1人です。

しかも、公務員獣医師は減っています

獣医師は2年ごとに届出が義務づけられていて、その集計が公表されています。10年ぶんを並べると、はっきり分かれます。

平成26年令和4年増減
小動物診療15,205人16,541人+1,336人
公務員9,456人9,145人−311人
産業動物診療4,317人4,460人+143人
全体39,098人40,455人+1,357人
平成26年から令和4年の推移。小動物診療は15,205人から16,541人に増加、公務員は9,456人から9,145人に減少

獣医師は増えているのに、公務員だけが減り続けています

獣医師そのものは1,357人増えているのに、公務員だけ311人減っています。

増えたぶんは、ほぼそのまま小動物診療にいきました。

一方で、家畜保健衛生所も食肉衛生検査所も、業務量は減っていません。鳥インフルエンザや豚熱の防疫、と畜検査。どれも人が要ります。

前回の記事で見た初任給調整手当の増額競争は、この不足が数字に出たものです。宮崎県が月7万円、山口県や広島県が月6万円。払わないと来てもらえないということです。

受験する側にとって、これは追い風です

ここからが本題です。この状況は、受ける側にとって何を意味するのか。

ポイント

定員割れが続いているということは、受験する側には追い風だということです。

筆記の比重が下がり、面接で決まる県が増えています。

1つめ 筆記より面接で決まります

選考採用は、教養試験のウェイトが低い県が多いです。論文と面接で構成される県もあります。

長崎県の第4回は「適性試験及び面接試験(専門知識に関する内容を含む)」だけです。

一般行政職のような**数的処理や文章理解の対策に何百時間もかける必要はありません。**そこは大きな違いです。

2つめ 併願できます

年に複数回、しかも県ごとに時期がずれています。

**第1回で不合格でも、第2回がある。**A県が終わってからB県を受けることもできます。一発勝負ではありません。

3つめ 年度の途中でも入れます

香川県の「随時」、佐賀県の「年間を通じて受付」がそうです。

臨床を辞めてから探し始めても、間に合うということです。4月採用に間に合わなくても、欠員があれば動きます。

4つめ 既卒・経験者も歓迎されています

福岡県と山梨県は62歳未満まで受けられます。

新卒しか採らない、という県のほうが少数派になってきました。臨床経験があれば加算される県もあります。

ゆっけ

ゆっけ

僕自身、臨床から公務員に戻った経験があります。あのとき知っていたら、もっと落ち着いて選べたと思います。

逆に、注意しておきたいこと

追い風とはいえ、そのまま受け取らないほうがいい点もあります。

人が足りない職場に入るということです。

欠員が埋まらないまま業務が回っているなら、そのぶんの負荷は既存の職員にかかっています。入ってから「思っていたより忙しい」となる可能性はあります。

説明会や面接では、こう聞いてみてください。

確認すること聞き方の例
欠員の状況「いま、定数に対して何名欠員がありますか?」
配属先の人数「家畜保健衛生所は、1か所あたり何名体制ですか?」
直近の採用実績「昨年度は何名採用されましたか?」

**採用が苦しい県ほど、正直に答えてくれます。**隠す理由がないからです。

まとめ

  • 倍率を公表しているのは47都道府県中4つだけ(東京1.5倍、埼玉1.9倍、千葉1.3倍、京都2.0倍)
  • 残る43道府県は選考採用。競争試験ではないので、倍率という数字がそもそもない
  • 埼玉県は23人募集して合格9人(予定の39%)。京都府は受けた6人が全員1次を通過
  • 東京都は受験率71%。申し込んでも3割は来ていない
  • 「1回で締め切ります」と書いた県は、ひとつもなかった
  • 北海道・大分・熊本・香川などは通年/随時募集。新潟・長野・三重は年3〜4回
  • 大分県は面接のみ、群馬県は教養試験を廃止。筆記が減っている
  • 年齢上限は62歳未満の県も。下は24歳なので、約38年ぶんの幅がある
  • 栃木県は5年間、合格者が予定数を上回った年でも充足していない(辞退のため)
  • 受験する側には追い風。ただし「人が足りない職場に入る」ことは確認しておく
ゆっけ

ゆっけ

「公務員は狭き門」というイメージ、獣医師に関しては当てはまりません

倍率が公表されていないことに、最初は困りました。でも47都道府県を調べ終わってみると、公表されていないこと自体が答えでした。

競争試験にする必要がないほど、人が足りていないのです。

迷っているなら、まず1回受けてみてください。落ちても次があります。

あわせて読みたい


※ 記事中の数字は、各自治体の人事委員会・採用ページ・募集要項、および報道をもとに2026年8月時点で確認したものです。年度によって変わります。最新情報は各自治体の採用ページでご確認ください。

SHARE THIS ARTICLE

関連記事

公務員獣医師になるには——種類・試験・年収・転職ルートを完全解説
キャリアの選択肢

公務員獣医師になるには——種類・試験・年収・転職ルートを完全解説

現役獣医師ゆっけが、公務員獣医師になる方法を徹底解説。家畜保健衛生所・食肉衛生検査所・厚生労働省まで、職種別の仕事内容・年収・試験対策・転職ルートをまとめました。

地方公務員獣医師あるある|辞めたくなる瞬間を集めてみた【厳選5選】
獣医師のリアル

地方公務員獣医師あるある|辞めたくなる瞬間を集めてみた【厳選5選】

保健所・家畜保健衛生所での勤務経験を持つ獣医師ゆっけが、地方公務員獣医師の現場で「辞めたくなった瞬間」を厳選5つにまとめました。給与の頭打ち・異動・年功序列・住民対応・ルーティンワークなど、組織の構造的な問題を共感ベースで解説。

国家公務員の獣医師になるには?仕事・年収・試験を解説
キャリアの選択肢

国家公務員の獣医師になるには?仕事・年収・試験を解説

農林水産省・動物検疫所・厚生労働省——「国」で働く獣医師の仕事内容・年収・なり方を解説。地方公務員との違い、試験のルート、向いている人まで。実際に農水省を目指して国家公務員試験を受けた経験を持つ現役獣医師ゆっけがまとめました。

公務員獣医師 完全ガイド|種類・年収・なり方を徹底解説
キャリアの選択肢

公務員獣医師 完全ガイド|種類・年収・なり方を徹底解説

公務員獣医師の全体像をこの1本に。地方と国家の違い・4つの職場・年収と待遇・採用ハードル・仕事のリアルな1日まで、保健所と家畜保健衛生所の2つの職場で働いた現役獣医師ゆっけが1本にまとめました。ここから必要な記事へ進めます。

PAGE TOP