
ゆっけ
こんにちは、ゆっけです。今回は、私が九州地方で産業動物獣医師として働いていた頃の、ある平日の1日をそのまま公開します。
きれいな仕事自慢ではなく、悪露のにおいが染みついたつなぎのまま昼飯を食う話まで、現場のリアルをそのまま書きました。産業動物への転職を考えている方、ぜひ読んでみてください。
まず数字で全体像をつかむ
文章の前に、1日のスケール感を数字で。
数字だけ見ればハードに感じないかもしれません。ただ、1件ごとに着替えて、泥にまみれて、また移動して——の繰り返しなので、夕方には体力がガス欠になります。
タイムスケジュール
8:30|出勤・準備
診療所に出勤したら、まずその日の分担決めです。誰がどのエリアを担当するか、どの農場を優先するか確認したら、プロボックスに薬を積み込みます。
注射薬・補液・器具類——手際よく積まないと、現場で「あれがない」となる。地味だけど大事な作業です。

ゆっけ
プロボックスは産業動物獣医師の相棒です。トランクが広くて段差が少なく、補液の段ボールがちょうど収まる。ここまで現場に最適化された商用車、他にないと思います。
9:30|診療開始(緊急性の高い順に巡回)
急性乳房炎などの緊急案件から順番に回ります。特に「牛が立たない」という連絡が来たら最優先。起立不能は原因が複数あって、判断も処置も早さが命です。

ゆっけ
本音は効率よく回りたい。でも「とりあえず急いで来て!」と言う農家さんに限って、めちゃくちゃ遠い場所にいたりするんですよね…。しかも道が細い。
午前中に4〜5件回ることもあれば、起立不能1件に2時間かかって午前はそれだけで終わる、なんて日もあります。
12:30|昼食・昼寝
往診車の中で昼食をとります。

ゆっけ
外食は基本ムリです。汗だくのつなぎ+悪露や膿汁のにおいが染みついた状態でお店に入るのは、他のお客さんに申し訳ない。なので車内飯が定番。
ここからが本題です。
昼食後、私は必ず昼寝をしていました。キンキンに冷えたプロボックスのシートで、15〜20分のうたた寝。これが本当に最高なんです。

ゆっけ
「サボってる」じゃなくて「回復してる」です。午後の診療の質を保つために必要な投資。本気で言ってます。
15:30|帰所・カルテ入力・補充作業
午後の診療が一段落したら、診療所に戻ってカルテ入力。往診中にメモした内容を清書するイメージです。
その後は薬の補充。特に夏場は補液の消耗が桁違いです。熱中症や脱水を起こした牛への点滴量がすごいので、プロボックスのトランクに補液をぎっしり詰め込む作業は、夏の風物詩でした。

ゆっけ
翌朝に「補液が足りなかった」は絶対NG。補充は念入りに、いつもより多めに。これは習慣というより生存戦略です。
17:15|帰宅(当直日は別)
追加の呼び出しがなければ、定時で帰宅。ただ、夕方に農家から電話が来ることもあります。

ゆっけ
私の診療所では当直制がきっちり決まっていました。「今日は◯◯先生の当直日」と分担表があり、当直じゃない日は呼び出しゼロ。これは小動物臨床の「全員でなんとなく対応」とは精神的負担が全然違います。
当直制の中身は、別記事で詳しく書く予定です。
季節で変わる「1日の景色」
産業動物臨床は、季節で1日の中身がガラッと変わります。同じスケジュールでも、見える景色は別物です。

ゆっけ
「夏は暑さと脱水との戦い、冬は寒さと分娩との戦い」とよく言ってました。年間スケジュールが体に染み込むまでは、季節の変わり目で体調を崩しがちです。
向いている人・向いていない人
5年やって感じた肌感を、正直に書きます。
向いている人
- 一人で運転する時間が苦じゃない人(むしろ好きならベスト)
- におい・血液・体液に強い人
- 農家さんと世間話ができるコミュ力がある人(技術より大事と言ってもいい)
- 1日の中で自分のペース配分を作れる人(昼寝も含めて)
- 体力に最低限の自信がある人
向いていない人
- 常に清潔な環境で働きたい人
- 屋内のチームワーク重視の働き方が好きな人
- 運転が苦手・一人で長時間移動するのが苦痛な人
- におい・体液に体が拒否反応を出す人

ゆっけ
「向き」は事前に分かりにくくて、やってみて初めて気づく部分も多いです。でも運転とにおいの2つだけは、やる前にイメトレしておくと後悔が減ります。
1日を振り返って

ゆっけ
こうやって書き出すと、結構ハードに見えるかもしれません。でも産業動物臨床の5年間、私はわりと好きでやっていました。
小動物臨床と大きく違うのは、フィールドが農場と往診車というオープンな世界であること。診察室という閉じた空間で1日中過ごすわけじゃない。九州の田舎道を走りながら次の農場に向かう移動時間が、ある種のリセット時間になっていました。
体はバキバキになるし、においもすごい。夏は地獄のように暑い。それでも「自分の手で動物の命に関わっている」という手ごたえは、臨床ならではのものだったと今でも思います。
産業動物臨床は、向いている人にとっては本当に面白い仕事です。向いていない人にとっては、体が持たないかもしれない。どちらなのかは、やってみるまで分からない部分もあります。
他の転職先と比べたら、産業動物獣医師はどこに位置する?
獣医師の主な転職先を、ワークライフバランス・給与・採用ハードルの3軸で比較するとこんな感じです。
| 転職先 | ワークライフバランス | 給与 | 採用ハードル |
|---|---|---|---|
| ⭐ 産業動物獣医師 | △(当直あり) | ○(2年目以降アップ) | ◎(低い) |
| 地方公務員 | ◎ | △ | ◎(低い) |
| 製薬会社 | ○ | ◎ | △(やや高い) |
| 食品関連企業 | ○ | ○ | △(やや高い) |
| 一般開業医(小動物) | △ | ○ | ◎(低い) |

ゆっけ
産業動物の強みは「採用ハードルが低い+2年目以降の給与が伸びる」こと。地域選びさえ間違えなければ、年収600〜700万円も射程内。一方で当直の有無や運転距離は自治体・診療所で大きく変わるので、見学で必ず確認してください。
※ これは私の経験に基づく一例です。地域・診療所・担当エリアによって1日のスケジュールや業務内容は大きく異なります。





