vetcareer
獣医師のリアル

産業動物獣医師の1日|現役獣医師がリアルな仕事内容を時系列で公開

産業動物獣医師の1日を、時系列で公開。往診、車内での昼食、当直のリアル、季節ごとの診療内容の違い、向き不向きまで解説します。

📅🔄⏱約9分で読めます
#産業動物#1日のスケジュール#体験談#獣医師のリアル
産業動物獣医師の1日|現役獣医師がリアルな仕事内容を時系列で公開
ゆっけ書いた人:ゆっけ(現役獣医師)保健所→産業動物臨床→家畜保健衛生所→畜産と、4つの現場を経験。
ワン

ワン

ゆっけさん、産業動物の獣医師って、どんな働き方をしているのか想像できないんです。

ゆっけ

ゆっけ

そうですよね。往診業務がメインなので、外からは見えにくいと思います。

動物病院なら、飼い主として中に入ったことがある人もいます。

でも産業動物の現場は、農場の中です。牛舎で何をしているかは、関係者しか見ていません。

私も転職する前は、正直まったく想像できませんでした。

そこでこの記事では、私が産業動物獣医師として働いていた頃の1日を、朝から順番にそのまま書きます。

移動時間も、車内での昼食も、当直の夜も、削らずに書きます。

📌 この記事の結論

  • 産業動物の1日は往診8〜10件・走行100km
  • 移動はプロボックスなどの商用車、昼食は車内で食べるのがほとんど
  • 拘束時間は8:30〜17:15が基本。日によっては残業あり(カルテ整理や月末の薬の棚卸しなど)
  • 当直は分担制で、当直じゃない日は呼び出しゼロ
  • 体力的にキツいこともあるが、農家さんに喜んでもらえることがやりがい

求人票や説明会では、実際の働き方までは分かりません。

1日の仕事を通して見るのが、その仕事との相性を知るいちばんの近道です。

産業動物獣医師の1日を、数字で見る

まず、1日の規模から。

📐1日のスケール感(数字で見る)
担当エリア
農場群を巡回
半径30〜40km
1日の往診件数
8〜10件
1日の走行距離
約100km
使用車両
プロボックスなどの商用車
診療車
拘束時間
+当直日のみ夜間対応
8:30〜17:15

数字だけ見れば、ハードに感じないかもしれません。

ただ、難産介助や手術が入れば、かなりハードな1日に激変します。

ポイント

その日にならないと、どれくらい忙しいのか分かりません。

予定が立てにくいのが、この仕事のいちばんの特徴です。

夏場は特に暑く、体力も奪われます。

産業動物獣医師のスケジュール

1日の流れは、こうです。

🕐産業動物獣医師の1日
8:30
出勤。分担を決めて、診療車に薬を積み込む
9:30
診療開始。緊急性の高い農場から巡回
12:30
昼食・昼寝(車内が定番)
15:30
帰所。カルテ入力と薬の補充
17:15
帰宅(当直の日は夜間も対応)

ざっくりとした流れは、こんな感じです。ここから1つずつ、中身を書いていきます。

8:30|出勤・準備

8:30に出勤すると、種付けや診療依頼の電話が鳴り響きます。

それを地域ごとにホワイトボードに書き出し、出勤している先生で診療件数を分担します。

担当が決まったら、診療車に薬を積み込みます。

注射薬・補液・器具類——手際よく積まないと、現場で「あれがない」となる。

いざ治療を始めようとして薬がないと、取りに帰るか、近くの先生と連絡を取ってどうにか薬を入手する必要があるので、時間をロスします。

ゆっけ

ゆっけ

診療車は産業動物獣医師の相棒。トランクが広い商用車タイプが多く、現場仕様でよくできているんです。

私の場合は、補液のダンボールを組み合わせて、薬をたくさん入れていました。

朝もやの駐車場で、診療車のトランクに補液の段ボール箱を積み込む、青いつなぎ姿の産業動物獣医師

朝の積み込み作業。地味だけど、1日の出来を左右する大事な準備です

9:30|診療開始(緊急性の高い順に巡回)

晴れた牧場でホルスタインの胸に聴診器をあてる産業動物獣医師。背景に牛舎と、ハッチを開けた診療車

往診のイメージ。1件ごとに農場を回り、車には診療道具一式を積んでいます

急性乳房炎などの緊急案件から、順番に回ります。

特に「牛が立たない」「子牛が産まれない」という連絡が来たら最優先。

起立不能は原因が複数あって、判断も処置も早さが命です。

ゆっけ

ゆっけ

本音は効率よく回りたい、でも「とりあえず急いで来て!」と言う農家さんに限って、めちゃくちゃ遠い場所にいたりするんですよね…。

午前中に4〜5件回ることもあれば、難産介助1件に2時間かかって午前はそれだけで終わる、なんて日もあります。

12:30|昼食・昼寝

診療の目処がついたら、お昼休みに入ります。

時間は目安ですが、私はお昼前後には休憩を取るようにしていました。

空腹が長く続くと夏場は危ないので、ご飯を食べて、きちんと休憩する。

診療車の運転席でシートを倒し、腕を組んでうたた寝する産業動物獣医師。窓の外に放牧中の牛、ミラーに聴診器

お昼は車内飯+昼寝が定番でした

ご飯は私の場合、汚れたつなぎで飲食店に入るのが嫌なので、いつもお弁当を持参して車内で食べていました。

節約の意味もあります。他の先生は、外食に行く人も多かったです。

休憩場所は、道の駅や公園の駐車場が多かったです。

午後の診療が軽そうなら、昼寝もします。

ゆっけ

ゆっけ

でも、昼寝の途中に限って追加の診療の連絡が来たりして、少しテンションが下がります(笑)

15:30|帰所・カルテ入力・補充作業

午後の診療が一段落したら、診療所に戻ってカルテ入力。

往診中にメモした内容を、パソコンで高速で打ち込みます。

隣のベテラン先生からは「診療種別は何番?」とか、あまり使わない薬の短縮番号をよく聞かれたりします。

その後は薬の補充。

特に夏場は、補液の消耗が桁違い。

私は心配性なので、過剰なくらい補液を診療車に詰め込んでいました。

そのおかげか、近くの先生から「Ca剤余ってない?」と連絡が来て、補液剤を他の先生たちに回すことも多かったです。

ちなみに、診療の合間で種付けも行っていました。

また、月末はカルテ整理や薬の棚卸しをするので、残業することが多いです。

棚卸しは事務仕事で一番大変な作業。薬の在庫が合わないことが多くて、最終的には力技で数字を合わせに行きます。

17:15|帰宅

追加の呼び出しがなければ、定時で帰宅。

ただ、夕方に農家さんから電話が来ることもあります。

当直は分担制。当番でない夜は、電話が鳴りません

ゆっけ

ゆっけ

私の診療所では当直制がきっちり決まっていて、当直じゃない日は呼び出しゼロでした。

「今日は◯◯先生の当直日」と分担表があります。

自分の当番でない夜は、呼び出されません。ここは動物病院と大きく違うところだと思います。

ただし、当直は1人体制です。

実際に自分が当直になったとき、農家さんから電話があると緊張します。

とくに「子牛がなかなか産まれない」と夜中に連絡があったときは、農場に着くまで緊張感マックス。

「無事に分娩介助できるかなー」「帝王切開するのやだなー」と考えながら、深夜の道を運転していたりします。

満月の夜、田んぼの間の道を走る診療車。遠くに灯りのついた牛舎が見える

当直の夜、農家さんからの連絡で農場へ向かう道のり

診療内容は季節で変わる

産業動物臨床は、季節で診療内容がガラッと変わります。

同じスケジュールでも、やっている仕事は別物です。

📋季節で変わる診療内容
春
一番平和な季節。
夏
熱中症・脱水・乳房炎が急増。
秋
なぜか搾乳牛の体調が崩れやすい。第四胃変位などの疾患が多発する。
冬
とにかく子牛の下痢が多発。点滴が多く、1件あたり1時間つきっきりということもザラ。

「夏は乳房炎、冬は子牛の下痢」とよく言っていました。

年間スケジュールが体に染み込むまでは、牛と同じで、私も季節の変わり目によく体調を崩していました。

向いている人・向いていない人

5年やって感じた肌感です。

⭕️向いている人
運転が好き
農家さんと世間話ができる(技術より大事)
1日の中で自分のペース配分を作れる
体力に最低限の自信がある
🔺向いていない人
運転が苦手/一人で長時間移動するのが苦痛
屋内でチームワーク重視の働き方が好き
常に清潔な環境で働きたい
土日祝日は必ず休みたい

シフト制なので、どうしても土日祝日が必ず休みになるとは限りません。

私の場合は、妻や子どもとの予定が合わなくなってきたので、臨床を一度離れるという選択をしました。

「向き」は事前に分かりにくく、やってみて初めて気づく部分も多いです。

でも運転(長時間の一人移動)だけは、やる前にイメージしておくと後悔が減ります。

しんどい場面をもっと具体的に知りたい方は、こちらもどうぞ。

他の転職先と比べると、採用ハードルの低さが際立つ

獣医師の主な転職先を、ワークライフバランス・給与・採用ハードルの3軸で比較するとこんな感じです。

転職先ワークライフバランス給与採用ハードル
⭐ 産業動物獣医師△(当直あり)○(2年目以降アップ)◎(低い)
地方公務員◎△◎(低い)
製薬会社○◎△(やや高い)
食品関連企業○○△(やや高い)
一般開業医(小動物)△○◎(低い)
ゆっけ

ゆっけ

産業動物の強みは「採用ハードルが低い+2年目以降の給与が伸びる」ことです。

採用ハードルが低い理由は、人数です

農林水産省が、獣医大学の卒業生の進路を調べています。

進路人数
小動物診療454人
産業動物診療126人
公務員107人

(令和5年3月卒・卒業生は約1,000人/農林水産省調べ)

毎年1,000人が獣医師になって、産業動物に進むのは126人です。

そもそも産業動物獣医師は、全国的に人手が足りていません。

そこへ入ってくるのが年126人なので、全国の診療所がこの人数を取り合う形になります。

採用のハードルが下がるのは当然でした。

給与は「2年目から」伸びます

1年目は公務員とほぼ同じ、約430万円です。

伸びるのは2年目からで、私の場合は約580万円になりました。

その先、中堅から役職前で600〜700万円というのが目安です。入ってすぐ届く数字ではありません。

実際の給与明細の中身は、こちらで公開しています。

一方で当直の有無や運転距離は診療所で大きく変わるので、必ず確認してください。

診療所そのものの選び方は、NOSAI獣医師とは?にまとめました。

まとめ:向いている人には、本当に面白い仕事

ゆっけ

ゆっけ

こうやって書き出すと結構ハードに見えますが、産業動物臨床の5年間、私はわりと好きでやっていました。

牛に蹴られれば体は痛みますし、牛舎のにおいは作業着にしみつきます。

夏の牛舎は、立っているだけで汗が止まりません。

それでも農家さんに「ありがとう」と喜んでもらえることが、この仕事のいちばんのやりがいだったと今でも思います。

小動物臨床と大きく違うのは、フィールドが農場であること。

診察室という閉じた空間で1日中過ごすわけじゃない。

田舎道を走りながら次の農場に向かう移動時間が、ある種のリセット時間になっていました。

運転中はYouTubeやAudibleなど、耳で楽しむ配信をよく聞いていました。

向いている人にとっては本当に面白い仕事で、向いていない人にとっては体が持たないかもしれない。

どちらなのかは、やってみるまで分からない部分もあります。

職場の種類・年収・将来性まで、産業動物臨床の全体像はこちらに。


出典:獣医事をめぐる情勢(令和6年2月・農林水産省)

※ これは私の経験に基づく一例です。地域・診療所・担当エリアによって1日のスケジュールや業務内容は大きく異なります。

SHARE THIS ARTICLE

ゆっけ
ここまで読んでくれてありがとう。最後にひとつだけ、伝えたいことがあります。

NEXT STEP

読んで終わりにしない。
まずは自分の市場価値を知ろう

転職エージェントの登録は無料。求人を見るだけでも、今の職場の見え方が変わります。 獣医師向けに厳選したエージェントをランキング形式で比較しました。

転職サイトランキングを見る →

※ 当サイトはアフィリエイト広告を含みます

関連記事

PAGE TOP