
ゆっけ
こんにちは、ゆっけです。
私は新卒で公務員獣医師になったあと、産業動物臨床(NOSAI)に転職して、現場で働いてきました。 今回は、産業動物獣医師として働いていた頃に「辞めたくなった瞬間」を厳選5つにまとめます。 広く浅くではなく、「これは本気でしんどかった」と感じたものだけを厳選しました。

ワン
ゆっけさん、産業動物臨床って外からは想像しづらいので、リアルな話気になります。

ゆっけ
動物病院あるある記事の産業動物バージョン、という感覚で読んでもらえたら。同業の人には「わかる…」と頷いてもらえるはずです。
この記事でわかること
- 産業動物獣医師が「辞めたくなる瞬間」のリアル
- NOSAI勤務時代のゆっけ自身の体験
- 産業動物臨床の構造的なしんどさ
- 産業動物以外のキャリア選択肢
あるある①:当直業務が単純にきつい
産業動物臨床の当直体制は、毎日誰かが当直するのが基本。当直の先生が、17時以降の診療をすべて担当します。
夜中の難産依頼から、「これ、呼ばなくてもよくない?」と思うような診療依頼まで、ジャンルは様々。

ゆっけ
お風呂上がりに「さあ寝るか」と思ったタイミングで電話が鳴ったときの絶望感は、産業動物獣医師なら一度は経験するはず。 たまに、朝5時くらいに「牛が死んだから死亡診断書を書いてほしい」と呼ばれることもあります。
しかも、当直業務の次の日も通常出勤。夜中の難産対応があると、寝不足のまま朝の往診に出る——というのが、産業動物臨床の日常です。
「休めば回復する」というレベルじゃなくて、慢性的に睡眠不足になっていく感じ。これを続けていると、心身ともにすり減っていきます。
あるある②:クセ強農家さんに当たると、本気で疲弊する
農家さんは基本的に良い人が多いです。ただ、中にはとんでもない人もいるのが現実。
- 獣医師の扱いが雑
- 「早く来い」と何度も急かしてくる
- 種付けのときに「この種は高いから絶対受胎させてよ」とプレッシャーをかけてくる
- 治療がうまくいかないと罵倒してくる

ゆっけ
私も人間なので、雑に扱ってくる農家さんのところに往診に行くのは、正直テンションが下がります。 でも獣医師には応召の義務があるので、診療を断ることはできない。これがしんどい。
私の体感ですが、若手獣医師が産業動物臨床を辞める理由としては、これが一番多いと感じています。
ただ、最近は少しずつ変わってきている

ゆっけ
フォローしておくと、最近は産業動物の獣医師が減ってきているので、農家さん側も「獣医師を大事にしないとマズい」という危機感を持つようになってきています。 昔よりは、クセ強農家さんは減少傾向。獣医師の立場が、少しずつ強くなってきている感覚はあります。
あるある③:給料が思ったより低い
これは現場に入って初めて知る人も多いと思います。
私はNOSAIで働いていました。NOSAIの給与体系は公務員に準拠しているので、正直なところ、公務員獣医師と給与はあまり変わらなかったです。
それどころか——

ゆっけ
食肉衛生検査所や家畜保健衛生所の獣医師より、給料が低いという現実。 産業動物臨床は体力的にも精神的にも大変で、当直業務までこなしているのに、給与は事務系の公務員獣医師と変わらない、あるいは下回る——これはちょっとテンションが下がりますね。
「産業動物臨床は給与がいい」というイメージを持っている人もいますが、実際は職場(NOSAI・JA・民間診療所など)によって大きく違います。少なくともNOSAI勤務は、給与面で過剰な期待をしないほうがいいというのが、私の本音です。
あるある④:突発的な休みが取りづらい
産業動物臨床は、シフト制で完全に勤務日が決まっているのが特徴。
つまり、自分が休むということは——
- 本来休みだった他の獣医師が出勤することになる
- その先生に申し訳が立たない
- 結果、自分が体調を崩しても無理して出勤する

ゆっけ
自分自身が体調悪くなったり、子供が熱を出したりしても、急に休むことができないんですよね。 1人がフルで動いて成り立つ仕組みなので、「ちょっと休む」ができない構造になっています。
高熱で診療に行ったら、事故を起こした話
ここで私の実体験を1つ。
ある日、高熱が出ていたのに、休めず診療に行ったことがあります。 意識がぼーっとした状態で農家さんのところに着いて、診療を始めようとした瞬間——農場に出っ張っていた金属に往診車をぶつけて、窓ガラスを割る事故を起こしました。
幸い、農家さんも私もケガはなかったのですが、後から考えると本当にゾッとします。 休めない構造のせいで、自分自身も農家さんも危険にさらしていたわけです。

ゆっけ
子育て世代の獣医師にとっては、これが致命的。「子供の急な発熱に対応できない」という理由で、産業動物臨床を辞めて公務員や企業に転職する人を、私の周りでも何人も見てきました。
あるある⑤:長期的な休みも取りづらい
産業動物臨床は、生き物相手なので365日診療業務があるのが宿命。 そのため、年末年始やお盆の期間もシフトで出勤します。
私が一番しんどかったのは、年末年始。

ゆっけ
診療所で一番下っ端だった頃は、正月勤務になることがよくありました。 家族みんなで実家に帰って、ゆっくり正月を過ごす——そんな普通のことが、産業動物臨床ではなかなかできない。 一人で迎える正月の寂しさは、産業動物獣医師あるあるのひとつです。
ただ、農家さんとの正月エピソードはちょっといい話

ゆっけ
フォローしておくと、正月勤務でも悪いことばかりじゃありませんでした。 往診先の農家さんのところで、一緒にお雑煮を食べさせてもらったこともあって、「これはこれで悪くないな」と思った瞬間も。 産業動物獣医師は、農家さんとの距離が近いからこその、こんな温かい思い出も作れます。
とはいえ、毎年これが続くと「家族と過ごしたい」気持ちが勝ってくるのも事実。長期休みが取れないというのは、ライフイベントが重なる年代になるとボディブローのように効いてきます。
産業動物あるあるは「業界の構造的な問題」でもある

ゆっけ
ここまで5つのあるあるを紹介してきましたが、共通点があります。 個人の頑張りでは解決しにくい、業界全体の構造的な問題だということ。
- 当直業務 → 少人数で広いエリアをカバーする仕組みの問題
- クセ強農家さん対応 → 応召義務と顧客対応リスクの問題
- 給料が思ったより低い → NOSAI・産業動物全体の給与水準の問題
- 突発的な休みが取りづらい → シフト制・少人数運営の構造的な問題
- 長期的な休みが取りづらい → 365日診療の宿命の問題

ゆっけ
だからこそ、「自分が悪いわけじゃない」「自分の頑張り不足じゃない」と思ってほしいんです。 産業動物臨床で辛いと感じるのは、ある意味正常な反応です。
もし産業動物臨床が辛いなら、これも選択肢のひとつ

ゆっけ
私自身、産業動物臨床を経験したあとに公務員獣医師(家畜保健衛生所)に再び戻り、今は別の畜産関係の仕事をしています。 獣医師としてのキャリアは産業動物だけじゃない——これは強く伝えたいことです。
特に、産業動物臨床のしんどさを感じている方には、以下のような選択肢があります。
- 公務員獣医師(家畜保健衛生所・食肉衛生検査所など) → 当直なし・休みやすい・給与は産業動物と同等以上
- 小動物臨床 → 産業動物とは違う世界だが、シフトや休みの取り方が違う
- 製薬会社・畜産関連企業 → 完全土日休み・年末年始もしっかり休める
▶ 地方公務員獣医師はセーフティネット。困ったときの駆け込み寺! ▶ 製薬企業で働く獣医師のキャリア|やりがい・年収・職種を同期に聞いた ▶ 家畜保健衛生所に勤める公務員獣医師の1日
「産業動物臨床しか道がない」と思い詰める前に、ぜひ他の選択肢も知ってみてください。




