獣医師のリアル
保健所に勤める公務員獣医師の1日(狂犬病予防員編)
2026年4月22日

ゆっけ
「公務員獣医師って、毎日何してるの?」って聞かれると、正直ちょっと答えに困ります。でも今日はそれに全力で答えます。私が2016〜2018年に保健所の狂犬病予防員として働いていた頃の、ある1日を時系列で見てもらいます。
狂犬病予防員って何をする人?
狂犬病予防法に基づいて、各自治体に配置される獣医師のことです。仕事の中身はざっくりこんな感じ。
- 犬の登録管理・徘徊犬の捕獲と収容
- 狂犬病予防注射の普及指導
- ペットショップ・ペットサロンなど動物取扱業者の立入検査
- 動物に関する苦情・相談対応
一言でいえば、「人と動物がかかわる公衆衛生」を守る最前線の仕事です。
私の職場のリアルな構造
ここが公務員獣医師のユニークなところで、ぜひ知っておいてほしい話です。
私の保健所のチーム構成は、私(当時新卒)+現業職員のおっちゃん3人でした。おっちゃんたちの平均年齢は55歳超。ベテランも、社会人経験も、なにもかも向こうが上。

ゆっけ
なのに——チームの上司は私です。新卒の私が。日本の年功序列文化とはまったく違った世界で、最初は本当に戸惑いました。「えっ、私が指示を出すの?」って。
おっちゃんたちはベテランだし、仕事も知り尽くしている。でも制度上は私が上司。この絶妙なパワーバランスが、公務員獣医師ならではの面白さでもあります。
では、そんな職場の1日を覗いてみましょう。
タイムスケジュール
出勤・犬舎へ挨拶
出勤したら、まず犬舎へ。収容されている犬たちの世話をしているおっちゃんたちに「おはようございます」と声をかける。
一応私も収容動物の健康状態を確認する。

ゆっけ
でも正直に言うと、保健所の獣医師って犬猫を診察する機会がほぼないんです。なので「この子、元気かな?」くらいはわかるけど、細かい健康チェックはお手上げです。よほど人馴れした子じゃないと触ることもできないし……。
おっちゃんたちの方がよっぽど犬のことをわかっているという現実は、内心ちょっと複雑でした。
現場へ出動
おっちゃんたちのメイン業務は徘徊犬の捕獲。通報が入れば車で現場へ向かいます。私も一緒に同行することがほとんどです。

ゆっけ
「現場へ出動」と書くと格好いいんですが、実態は9割がたドライブです。通報場所に着いても犬がいない、なんてことはザラで。青空の下、おっちゃんと2人で車内でぼんやり待機……っていう時間もけっこうありました。
たまに捕獲できると達成感があって、おっちゃんたちの手際の良さに素直に感動します。あれは訓練と経験の技術です。
所に戻って相談・苦情対応
所に戻ると、電話やメールの問い合わせを処理します。多い相談はだいたい決まっています。
- 「飼い犬がいなくなった」
- 「近所の人が猫に餌付けをしていて、どんどん増えている」
そして一番多い苦情がこれ。

ゆっけ
「大量繁殖した猫の糞尿が臭くてたまらない」という苦情が、本当に多いんです。しかも苦情を入れてくる人と、猫に餌付けしている人と、両者の板挟みになる。答えのない問題を毎日対応するのは、正直しんどい仕事です。
法律で解決できることに限界があるのを痛感する時間帯でした。
昼休憩
お弁当持参で、執務室でひとりご飯。

ゆっけ
たまにおっちゃんたちが「飯行くか」って声をかけてくれる日があって、これが地味に嬉しいんです。年齢も立場も違うのに、定食屋でなんでもない話をする時間は、けっこう好きでした。
こういう何気ない時間が、職場の空気をほぐしてくれるんですよね。
動物取扱業の立入検査
午後は、ペットサロンやペットショップへの立入検査が入ることが多いです。動物取扱業の登録基準(建物の構造や飼育環境など)を確認しに行きます。
私は田舎の保健所に勤務していたので、対象施設まで片道1時間かかることもありました。

ゆっけ
一人でドライブするので、気分転換になります。窓を開けて山の空気を吸いながら走る時間は、仕事中とは思えないほど清々しかった。「これが公務員の旅費」と思えば悪くないです(笑)。
検査自体はそこまで複雑ではなく、チェックリストを確認してヒアリングして終わりというのが実態です。
帰庁・書類整理
所に戻って、書類仕事。許可証の作成、立入検査の記録、問い合わせの記録……地味なデスクワークです。

ゆっけ
この時間帯が一番眠くなります。退庁時間の17:15まで、おっちゃんと他愛もない話をしたり、犬舎に行って時間の経過を待ったり。このゆるい時間の流れが、良くも悪くも公務員のリアルです。
退庁
緊急の対応がない限り、定時でそのまま帰ります。残業はほぼゼロ。

ゆっけ
残業がないのは本当にありがたかった。体力より精神が削れる仕事なので、帰ってゆっくりできる時間が回復には一番大事でした。
1日を振り返って
保健所の狂犬病予防員の1日は、ドラマチックな出来事が毎日あるわけじゃないです。でもそれが正直な話です。
苦情の板挟みに疲れる日もあるし、おっちゃんの上司として立ち回りに悩む日もある。でも一方で、公衆衛生という目に見えにくい部分で地域を支えているという実感は、ちゃんとありました。
狂犬病の発生を防ぐ、動物由来の問題が広がる前に食い止める——地味だけど、これがなくなったら困る仕事です。

ゆっけ
「ほどほどに働きながら、地域に貢献したい」という人には、けっこうハマる職場だと思います。私は産業動物に戻りましたが、公務員時代の経験は今でも財産です。
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